GSX-S1000 VS MT-09 合同インプレッション Vol.4 |
エンジン・・MT-09 |
今回からユーロ5の排ガス規制に対応しつつ 先代と比べて排気量が41ccアップした事で 名前の通り、ほぼ900ccのエンジンになりました。 ピストンのストローク量を増やす事で排気量が上がっているので 低~高回転域の全域でトルクがアップしている訳ですが 特に低回転域でのトルクアップが 街乗りでの普段使いをより一層楽にしていますね。 MT-09はそもそもじゃじゃ馬のような性格だったので さらに大きなトルクを得た事で加速時には より簡単にフロントタイヤが浮き上がりやすくなる訳ですが 1速、2速のギア比を重くする事で調整したり 高度な電子制御によって完全に手なずけられています。 国内メーカーでは唯一無二の3気筒エンジンなんですが 3気筒エンジンと聞くとどうしても 軽自動車のエンジンを想像してしまうのですが このエンジンはなんと言っても 不等間隔燃焼のクロスプレーンなので 他には無い個性の塊のようなエンジンですね。 まず、普通に街中を走っていても 不等間隔燃焼に気付くことは無いというか MT-09だけに乗っていると すぐに慣れてしまうので当たり前の感覚になってしまいます。 しかも、不等間隔燃焼がもっとも効果的になるのは サーキット走行時にコーナーの立ち上りで 後輪を滑らしながら走る時や 未舗装路の滑りやすい路面での走行時なので ツーリング等でマッタリ走らせているだけでは そのメリットが生かしにくいのかもしれません。 |
しかし、クロスプレーンのMT-09に慣れきった時に 同排気量の他の車両に乗り換えた時に 特別なエンジンに乗っていた事に気付かされ GSX-S1000のような一般的な等間隔燃焼のエンジンで ハイレスポンスな走行モードで走ると よりスロットルコントロールが難しく感じてしまいます。 その感覚の違いを文章で説明するのは難しいのですが 一般的な等間隔燃焼のエンジンでは 加速時にアクセルを緩めた時のトルクの収まり方に タイムラグを感じるというか歯切れの悪さを感じます。 それは単純に4気筒エンジンと3気筒エンジンの 特性の違いでもあるのですが クロスプレーンの3気筒エンジンだと よりその差を強く感じます。 走行モードの時にも少し触れましたが もっともハイレスポンスなAモードでの走行でも 普通に街中を走れてしまうというか 容易にスロットルをコントロール出来てしまうので それはクロスプレーンのエンジンが スロットル操作に対して正確に追従してくれるので扱いやすい 何よりの証拠なのかもしれませんし あらゆる場面で実はクロスプレーンの恩恵を受けていた・・ という事にもなりますね。 ちなみにクラッチだけで車体を発進させた時のエンスト耐性ですが エンストするそぶりもあまりなくスムーズに発進出来たので 信号待ちでも気を使う事なく扱いやすいエンジンだと思います。 |
マフラー・・MT-09 |
最近流行りのアンダーマウントのマフラーで 地面に向けての左右2本出しの構造になっています。 車体からの飛び出しが無いので 狭い道や駐輪所に入れる時にはありがたいですね。 3気筒エンジンにクロスプレーンの不等間爆発という事で 気になる排気音ですが 空吹かしの排気音を収録してきたのでどうぞ・・ MT-09 純正マフラー(MP3) 排気音を聞けば何気筒なのか大抵分かるのですが 2気筒とも4気筒とも違う独特な排気音ですね。 |
エンジン・・GSX-S1000 |
MT-09みたいに排気量が上がった訳ではないのですが ユーロ5の排ガス規制をクリアしながらも 先代よりもほんのちょこっとだけ出力が上がってますね。 低中速回転域のトルクを太らせたチューニングを施した GSX-R1000のエンジンをそのまま積んでいるので スーパースポーツのエンジンにありがちな 排気量の割には低回転域のトルクが細いという 加速フィーリングは微塵にも感じず もはや1300ccの隼のエンジンは必要ないんじゃないかと思わせるくらい 発進直後からトルクモリモリの加速フィールを味わえます。 エンジン単体で比較するなら まるでMT-09が普通の優しいエンジンに思えるほどなので むしろ同じSSのエンジンを積んだMT-10と比べるべきですね。 |
1300ccの隼のエンジンでは4気筒エンジンとは思えないような ガサツな回転フィールがまるでモンスターのように思えましたが GSX-S1000はさすがSSのエンジンと思わせるような 実に滑らかな回転フィールと同時に 高回転域での強烈なパワーの伸びも味わえますね。 SSのエンジンそのままだと低回転域でカスカスだし かといって低中回転域に特化させてストリート寄りに振りすぎても レッドゾーンに向かってのパワーの伸びが味わえないので 面白くないのですが このGSX-S1000のエンジンは 低回転域から高回転域までのバランスが絶妙で ストリートからサーキットまで幅広く対応が出来る 良い所取りをしたようなエンジンだと思います。 今まで乗ってきた1000ccのエンジンの中でも ベストなチューニングを施したエンジンなんじゃないかと思います。 そもそも200PS前後のポテンシャルを持ったエンジンですが ストリートやワインディングで走らせるなら 1000ccの4気筒エンジンでは おそらく150PSあたりがベストバランスなんでしょうね。 クラッチだけで車体を発進させた時のエンスト耐性ですが やはりSSのエンジンという事もあり フライホイールが軽い影響なのか 気を抜くとストンとエンジンストールしてエンストするので SS特有のねばりの無いエンジンだと思います。 それでも低回転域からトルクのあるエンジンなので アクセルをほんの少しでも入れておけば エンストする事は無いのですが そのようなSS直系エンジンの悪い所も少し残っているので MT-09のエンジンとの差をこういう所で一番感じますね。 |
マフラー・・GSX-S1000 |
車体の底部分に箱タイプの メインサイレンサーを備えているのはMT-09と同じですが そこから簡易的なサイレンサーが少し飛び出していて その根元にはサーボ制御のバタフライ弁があり エンジン回転数やスロットル開度、ギアポジションにより 弁の開閉具合が変わる可変タイプのマフラーですね。 SS譲りの4気筒エンジンということで 気になる排気音ですが空吹かしの排気音を収録してきました。 GSX-S1000 純正マフラー(MP3) まさにSSのエンジンそのものといった迫力があって 官能的とも言えるサウンドですね。 3気筒エンジン、ましてや2気筒エンジンでは 絶対に味わえない世界がここにはあります。 このサウンドを得る為に無駄に多くの燃料を燃やすのです。 環境には多少悪くても 人間の本能を呼び覚ますような魅力があると思います。 |
トランスミッション・・MT-09 |
ギアチェンジする時のペダルのフィーリングは 特に柔らかくもなく硬くも無くといった印象ですが 気になるのはニュートラルに入る時の節度感で 少し引っかかりが弱く感じる時があるので 1速から2速を行ったり来たりする事があります。 まあその分、1速から2速に入れる時は滑らかなんですけどね・・ あとは最近当たり前の装備になりつつある アシスト付きスリッパークラッチが採用されていますが クラッチレバーを操作する事がほとんどない クイックシフターが付いた車両では その恩恵はあまり受けられない感じはします。 6速時のエンジン回転数と速度の関係は・・ 2000回転:50Km/h 3000回転:75Km/h 4000回転:100Km/h でした。 |
クイックシフター・・MT-09 |
クラッチレバーを操作しなくても シフトペダルを操作するだけで変速が出来る クイックシフターが標準装備されています。 特に特徴的な所はない至って普通のクイックシフターなんですが クイックシフターの共通している決まり事としては シフトアップする時には必ず アクセルを少しでも捻っておく必要がありますね。 メニュー画面からクイックシフターのオンオフも出来ますよ。 |
トランスミッション・・GSX-S1000 |
MT-09と比べるとシフトペダルのフィーリングは ほんの少しだけ節度感が強めなのですが 個人的にはベストと思える丁度良いフィーリングだと思います。 ちなみにGSX-S1000にも アシスト付きスリッパークラッチが採用されています。 6速時のエンジン回転数と速度の関係は・・ 約2200回転:50Km/h 2500回転:60Km/h 3500回転:80Km/h 4200回転:100Km/h でした。 MT-09もGSX-S1000もエンジンのレブリミットは 約11000回転ちょいという事で 近い事もあってギア比もほぼほぼ同じ感じですね。 |
クイックシフター・・GSX-S1000 |
GSX-S1000もクイックシフターが標準装備なんですが 明らかに他の車両とは全く違う所があります。 それはアクセルを捻らなくてもシフトアップが出来る所で クイックシフターの常識を地味にブチ破っているので これはさすがにちょっと驚きました。 あと変速時の縦Gの変化が他とは全く違っていて 一般的にはカチンという感じで 例えるならクラッチレバーを使わずに 変速させたような変速フィーリングなんですが GSX-S1000では変速時にエンジンと同調させて 燃焼をコントロールしているかのような フワッと縦Gが抜ける角の無い滑らかな縦Gの変化になるので 少し高級感すら感じますし その縦G変化が何だか気持ちがいいので妙にクセになりますね。 このクイックシフターは間違いなく 国内全メーカーの中でもトップのデキというか 次世代のクイックシフターという感じがしますね。 ちなみにGSX-S1000でもオンオフの切替が可能です。 |
燃料タンク・・MT-09 |
MT-07と09は燃料タンクの容量が小さい という印象しかないんですが 初代から変わっていないので14Lですね。 間違いなくここもMT-09の短所だとは思いますが それでも3気筒エンジンなので 同排気量の4気筒エンジン勢と比べれば燃費が良く 市街地での実燃費に近いWMTCモード値を参考にすると 航続距離は280Km程度走る計算になりますね。 ただ、この後方に向かって絞り込まれた 燃料タンクカバーの曲線美や 自然に膝をホールド出来るスマートな形状など 燃料タンクの容量を妥協したからこそ出来た事も沢山あります。 |
燃料タンク・・GSX-S1000 |
こちらは先代と比べて2Lほど容量がアップしているので 19Lとなかなかの大容量となりましたね。 SS譲りの1000cc4気筒エンジンという事もあり 燃費は悪い部類に入るエンジンなのですが それでもWMTCモード値の燃費から計算すると 315Km前後の航続距離まで伸びます。 |