GSX-S1000 VS MT-09 合同インプレッション Vol.4

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RN69J型MT-09エンジン

エンジン・・MT-09

今回からユーロ5の排ガス規制に対応しつつ

先代と比べて排気量が41ccアップした事で

名前の通り、ほぼ900ccのエンジンになりました。

ピストンのストローク量を増やす事で排気量が上がっているので

低~高回転域の全域でトルクがアップしている訳ですが

特に低回転域でのトルクアップが

街乗りでの普段使いをより一層楽にしていますね。

MT-09はそもそもじゃじゃ馬のような性格だったので

さらに大きなトルクを得た事で加速時には

より簡単にフロントタイヤが浮き上がりやすくなる訳ですが

1速、2速のギア比を重くする事で調整したり

高度な電子制御によって完全に手なずけられています。

国内メーカーでは唯一無二の3気筒エンジンなんですが

3気筒エンジンと聞くとどうしても

軽自動車のエンジンを想像してしまうのですが

このエンジンはなんと言っても

不等間隔燃焼のクロスプレーンなので

他には無い個性の塊のようなエンジンですね。

まず、普通に街中を走っていても

不等間隔燃焼に気付くことは無いというか

MT-09だけに乗っていると

すぐに慣れてしまうので当たり前の感覚になってしまいます。

しかも、不等間隔燃焼がもっとも効果的になるのは

サーキット走行時にコーナーの立ち上りで

後輪を滑らしながら走る時や

未舗装路の滑りやすい路面での走行時なので

ツーリング等でマッタリ走らせているだけでは

そのメリットが生かしにくいのかもしれません。

 
RN69J型MT-09エキゾースト

しかし、クロスプレーンのMT-09に慣れきった時に

同排気量の他の車両に乗り換えた時に

特別なエンジンに乗っていた事に気付かされ

GSX-S1000のような一般的な等間隔燃焼のエンジンで

ハイレスポンスな走行モードで走ると

よりスロットルコントロールが難しく感じてしまいます。

その感覚の違いを文章で説明するのは難しいのですが

一般的な等間隔燃焼のエンジンでは

加速時にアクセルを緩めた時のトルクの収まり方に

タイムラグを感じるというか歯切れの悪さを感じます。

それは単純に4気筒エンジンと3気筒エンジンの

特性の違いでもあるのですが

クロスプレーンの3気筒エンジンだと

よりその差を強く感じます。

走行モードの時にも少し触れましたが

もっともハイレスポンスなAモードでの走行でも

普通に街中を走れてしまうというか

容易にスロットルをコントロール出来てしまうので

それはクロスプレーンのエンジンが

スロットル操作に対して正確に追従してくれるので扱いやすい

何よりの証拠なのかもしれませんし

あらゆる場面で実はクロスプレーンの恩恵を受けていた・・

という事にもなりますね。

ちなみにクラッチだけで車体を発進させた時のエンスト耐性ですが

エンストするそぶりもあまりなくスムーズに発進出来たので

信号待ちでも気を使う事なく扱いやすいエンジンだと思います。

 
RN69J型MT-09マフラー

マフラー・・MT-09

最近流行りのアンダーマウントのマフラーで

地面に向けての左右2本出しの構造になっています。

車体からの飛び出しが無いので

狭い道や駐輪所に入れる時にはありがたいですね。

3気筒エンジンにクロスプレーンの不等間爆発という事で

気になる排気音ですが

空吹かしの排気音を収録してきたのでどうぞ・・

MT-09 純正マフラー(MP3)

排気音を聞けば何気筒なのか大抵分かるのですが

2気筒とも4気筒とも違う独特な排気音ですね。

 
EK1AA型GSX-S1000エンジン

エンジン・・GSX-S1000

MT-09みたいに排気量が上がった訳ではないのですが

ユーロ5の排ガス規制をクリアしながらも

先代よりもほんのちょこっとだけ出力が上がってますね。

低中速回転域のトルクを太らせたチューニングを施した

GSX-R1000のエンジンをそのまま積んでいるので

スーパースポーツのエンジンにありがちな

排気量の割には低回転域のトルクが細いという

加速フィーリングは微塵にも感じず

もはや1300ccの隼のエンジンは必要ないんじゃないかと思わせるくらい

発進直後からトルクモリモリの加速フィールを味わえます。

エンジン単体で比較するなら

まるでMT-09が普通の優しいエンジンに思えるほどなので

むしろ同じSSのエンジンを積んだMT-10と比べるべきですね。

 
EK1AA型GSX-S1000エキゾースト

1300ccの隼のエンジンでは4気筒エンジンとは思えないような

ガサツな回転フィールがまるでモンスターのように思えましたが

GSX-S1000はさすがSSのエンジンと思わせるような

実に滑らかな回転フィールと同時に

高回転域での強烈なパワーの伸びも味わえますね。

SSのエンジンそのままだと低回転域でカスカスだし

かといって低中回転域に特化させてストリート寄りに振りすぎても

レッドゾーンに向かってのパワーの伸びが味わえないので

面白くないのですが

このGSX-S1000のエンジンは

低回転域から高回転域までのバランスが絶妙で

ストリートからサーキットまで幅広く対応が出来る

良い所取りをしたようなエンジンだと思います。

今まで乗ってきた1000ccのエンジンの中でも

ベストなチューニングを施したエンジンなんじゃないかと思います。

そもそも200PS前後のポテンシャルを持ったエンジンですが

ストリートやワインディングで走らせるなら

1000ccの4気筒エンジンでは

おそらく150PSあたりがベストバランスなんでしょうね。

クラッチだけで車体を発進させた時のエンスト耐性ですが

やはりSSのエンジンという事もあり

フライホイールが軽い影響なのか

気を抜くとストンとエンジンストールしてエンストするので

SS特有のねばりの無いエンジンだと思います。

それでも低回転域からトルクのあるエンジンなので

アクセルをほんの少しでも入れておけば

エンストする事は無いのですが

そのようなSS直系エンジンの悪い所も少し残っているので

MT-09のエンジンとの差をこういう所で一番感じますね。

 
EK1AA型GSX-S1000マフラー

マフラー・・GSX-S1000

車体の底部分に箱タイプの

メインサイレンサーを備えているのはMT-09と同じですが

そこから簡易的なサイレンサーが少し飛び出していて

その根元にはサーボ制御のバタフライ弁があり

エンジン回転数やスロットル開度、ギアポジションにより

弁の開閉具合が変わる可変タイプのマフラーですね。

SS譲りの4気筒エンジンということで

気になる排気音ですが空吹かしの排気音を収録してきました。

GSX-S1000 純正マフラー(MP3)

まさにSSのエンジンそのものといった迫力があって

官能的とも言えるサウンドですね。

3気筒エンジン、ましてや2気筒エンジンでは

絶対に味わえない世界がここにはあります。

このサウンドを得る為に無駄に多くの燃料を燃やすのです。

環境には多少悪くても

人間の本能を呼び覚ますような魅力があると思います。

 
RN69J型MT-09トランスミッション

トランスミッション・・MT-09

ギアチェンジする時のペダルのフィーリングは

特に柔らかくもなく硬くも無くといった印象ですが

気になるのはニュートラルに入る時の節度感で

少し引っかかりが弱く感じる時があるので

1速から2速を行ったり来たりする事があります。

まあその分、1速から2速に入れる時は滑らかなんですけどね・・

あとは最近当たり前の装備になりつつある

アシスト付きスリッパークラッチが採用されていますが

クラッチレバーを操作する事がほとんどない

クイックシフターが付いた車両では

その恩恵はあまり受けられない感じはします。

6速時のエンジン回転数と速度の関係は・・

2000回転:50Km/h 3000回転:75Km/h 

4000回転:100Km/h でした。

 
RN69J型MT-09クイックシフター

クイックシフター・・MT-09

クラッチレバーを操作しなくても

チェンジペダルを操作するだけで変速が出来る

クイックシフターが標準装備されています。

特に特徴的な所はない至って普通のクイックシフターなんですが

クイックシフターの共通している決まり事としては

シフトアップする時には必ず

アクセルを少しでも捻っておく必要がありますね。

メニュー画面からクイックシフターのオンオフも出来ますよ。

 
EK1AA型GSX-S1000トランスミッション

トランスミッション・・GSX-S1000

MT-09と比べるとチェンジペダルのフィーリングは

ほんの少しだけ節度感が強めなのですが

個人的にはベストと思える丁度良いフィーリングだと思います。

ちなみにGSX-S1000にも

アシスト付きスリッパークラッチが採用されています。

6速時のエンジン回転数と速度の関係は・・

約2200回転:50Km/h 2500回転:60Km/h 3500回転:80Km/h

4200回転:100Km/h でした。

MT-09もGSX-S1000もエンジンのレブリミットは

約11000回転ちょいという事で

近い事もあってギア比もほぼほぼ同じ感じですね。

 
EK1AA型GSX-S1000クイックシフター

クイックシフター・・GSX-S1000

GSX-S1000もクイックシフターが標準装備なんですが

明らかに他の車両とは全く違う所があります。

それはアクセルを捻らなくてもシフトアップが出来る所で

クイックシフターの常識を地味にブチ破っているので

これはさすがにちょっと驚きました。

あと変速時の縦Gの変化が他とは全く違っていて

一般的にはカチンという感じで

例えるならクラッチレバーを使わずに

変速させたような変速フィーリングなんですが

GSX-S1000では変速時にエンジンと同調させて

燃焼をコントロールしているかのような

フワッと縦Gが抜ける角の無い滑らかな縦Gの変化になるので

少し高級感すら感じますし

その縦G変化が何だか気持ちがいいので妙にクセになりますね。

このクイックシフターは間違いなく

国内全メーカーの中でもトップのデキというか

次世代のクイックシフターという感じがしますね。

ちなみにGSX-S1000でもオンオフの切替が可能です。

 
RN69J型MT-09燃料タンク

燃料タンク・・MT-09

MT-07と09は燃料タンクの容量が小さい

という印象しかないんですが

初代から変わっていないので14Lですね。

間違いなくここもMT-09の短所だとは思いますが

それでも3気筒エンジンなので

同排気量の4気筒エンジン勢と比べれば燃費が良く

市街地での実燃費に近いWMTCモード値を参考にすると

航続距離は280Km程度走る計算になりますね。

ただ、この後方に向かって絞り込まれた

燃料タンクカバーの曲線美や

自然に膝をホールド出来るスマートな形状など

燃料タンクの容量を妥協したからこそ出来た事も沢山あります。

 
EK1AA型GSX-S1000燃料

燃料タンク・・GSX-S1000

こちらは先代と比べて2Lほど容量がアップしているので

19Lとなかなかの大容量となりましたね。

SS譲りの1000cc4気筒エンジンという事もあり

燃費は悪い部類に入るエンジンなのですが

それでもWMTCモード値の燃費から計算すると

315Km前後の航続距離まで伸びます。

 

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